2024.03.29
レポート
2023年9月から2024年1月まで、尼崎市の「インターンシップ等推進支援業務」の一環として、尼崎双星高校商業学科の3年生が市内4企業と一緒に活動し、新商品開発や課題解決を行う長期インターンシップに取り組みました。
このインターンシップの目的は、高校生の企業訪問や仕事内容を中心としたワークショップ等の交流を通じて行う、事業者の魅力発信です。
「見る」「触れる」「話す」体験を通し、企業が高校生に仕事内容や企業の魅力を伝え、仕事に必要なスキルについて考える場を提供しています。
尼崎市ホームページ 実践型インターンシップ推進事業
尼崎市立尼崎双星高等学校ホームページ
商業学科3年生を対象に「後期課題研究」の授業内で行う長期インターンシップは、2023年9月にスタート。2024年1月まで授業を行い、2月の「尼崎でつながる地域の活動報告会 および 尼崎市インターンシップ報告会」まで活動しました。
約70人が6班に分かれて11人または12人で1つの班をつくり、新商品開発、企業とお店の事業を盛り上げて課題解決を目指す「しかけ学」などに取り組みました。この記事では、2班~5班の活動を紹介します。
2班:新商品開発/株式会社カワグチマック工業
AmaPortal 株式会社カワグチマック工業のページ
3班:新商品開発/有限会社柏木鉄工
AmaPortal 有限会社柏木鉄工のページ
4班:仕掛学/MoMo(富松町のお弁当屋さん)
5班:仕掛学/旭建設株式会社
AmaPortal 旭建設株式会社のページ
※2~5班は尼崎市インターンシップ対象、株式会社エアグラウンドがコーディネートを担当
商業学科では他に、1班は株式会社エアグラウンド、有限会社中野製作所とロボットオペレーター育成プログラム「ロボメイツ」の活動を、6班は賀名生漆工芸(あのううるしこうげい)と「漆産業を守る」という活動を行いました。
・企業研究、リサーチ、企業見学
・アイデア提出、検討
・試作などの実践
・振り返り
企業から提示された課題やテーマに対し、生徒たちはアイデアを出し合い、企業の担当者と相談しながら実現へ向けて研究を進めました。
企業や商品について学び、市場調査を行ってアンケートをとったり、新商品開発では「アイデアスケッチ」を描いたり、さまざまな取り組みができたのは、長期インターンシップならではです。
アイデアが固まったら、企業は試作や販売など実践へ。終了後には、良かった点や改善点などの振り返りを行いました。
2班は、段ボール製造販売を手掛ける株式会社カワグチマック工業と、紙を原料とした資材「紙建材」を使った新商品の開発をしました。
まずは、同社が「紙建材」と呼ぶ紙を原料とした資材について学習。再利用可能など環境面をSDGsの観点からも研究しました。また、耐久性や保温性、断熱性、耐水性などにすぐれた特徴などを知り、商品を考えました。
「ペット」「学校」「幼児」という3テーマのもと、アンケートや保育園での取材など、市場調査を経てアイデアを募った結果、
・ウサギの家
・大型鳥類の止まり木
・教室用ロッカー
・ホワイトボード付き滑り台
といった案が出されました。
「ホワイトボード付き滑り台」は試作に至り、高校生が試しに滑ったり、絵を描いたりする体験もできました。
テーマ:端材を活用した商品開発~クラウドファンディングで「カラビナ」リリース~
3班は、有限会社柏木鉄工と、鉄の加工で出る端材を利用した新商品を開発。
職人技で鉄の端材を活用し、アップサイクルで便利グッズを提供する同社のブランド「ハザクルラボ」について知り、身近な不便を解決しようと10代、20代をターゲットに商品を考えました。
その結果、「機能性カラビナフック」に決定。バッグハンガーなどさまざまな便利機能で付加価値を高めました。
班の中で担当を分け、デザイン班はフックの形を考案。広報班は商品開発の様子や使用場面を撮影し、同社のインスタへ投稿するなど広報活動に取り組みました。
また、クラウドファンディングにも挑戦し、1か月余りの募集で目標金額に対し200%近い達成率となりました。兵庫県外からも多くの申し込みがあり、コメントや改善点など意見をたくさんいただいたそうです。
テーマ:地域連携としてMoMoさんと提携 仕掛学と商品開発を利用してみたら…
4班は、MoMo(富松町のお弁当屋さん)と活動しました。
・仕掛学を用いた収納問題の解決
・新商品開発
人が思わず行動したくなるように促す「仕掛学」の考え方を使って、収納しやすい仕切りを提案し、お店で実行してもらいました。探す手間だけでなく、時間短縮になった分を時給から金額に換算し、節約効果を算出しました。
新商品開発では、中高生向けのボリュームある焼肉弁当をはじめ、アジフライ弁当、動物をモチーフにした子ども向けオードブル、児童ホーム向けお菓子の詰め合わせを考案。ターゲットやニーズを考えるだけでなく、原価を抑える工夫や商品の魅力を上げる工夫もこらしました。
また、販売結果から、良かった点や改善点などを挙げる振り返りも行いました。
テーマ:旭建設からの挑戦状~仕掛学を使い、明るい未来・明るい会社・明るい旭建設へ~
5班は、旭建設株式会社から「挑戦状」として出された下記の3テーマのもとで活動しました。
①営業訪問に行きたくなる
②整理整頓したくなる
③SNSの活用
営業訪問用パンフレットや、訪問回数に応じて特典がもらえるスタンプカード、簡単に作れて季節ごとに変わる社内報を作成しました。
仕掛学の「ついやってみたくなる」心理を利用した整理整頓術の一つは、背表紙に社長の写真を付けたファイルを順序通りにきちんと並べると、社長の全身写真が完成するという仕組みです。ほかにも紙を入れたくなるポストなどが実際に社内で利用されているそうです。
SNSの活用では、LINEスタンプや動画の制作、同社の利用客のSNS投稿を促進する仕掛けなど、高校生の感性を生かした提案を行いました。
11月に中間発表会で校内に向けてプレゼンテーションを実施し、5か月間の授業を終えた後、2024年2月には「尼崎でつながる地域の活動報告会 および 尼崎市インターンシップ報告会」へ参加。企業や教育関係者、行政関係者など大人たちの前で堂々と発表しました。
スクリーンに映し出して説明するスライド資料を作ったり、台本を作って話す練習をしたり、プレゼンテーションの体験学習の場にもなりました。
有限会社柏木鉄工、株式会社カワグチマック工業、有限会社中野製作所にご協力いただき、企業訪問も実施。工場見学や社員さんへの取材を行いました。
・新商品を考えてみて、原価をはじめ多くの観点から考える必要があって大変さに気付いた。
・普段は関わることのない会社の人たちと一緒に、会社のことについて考え、それが形として残っているのがうれしい。とても貴重な体験ができたのでよかった。
・これから社会に出て就職していく中で、会社全体を見ると、できていないことや解決していくのが難しいものなど課題が多くあることに気付いた。
・実際に働いている大人の人と関わって意見を出し合ったりすることが滅多にないので、とても楽しかった。
「今の高校生の考えていることが知りたい」「今後の周知活動や鉄工所のイメージの改革」「製造業の魅力やモノづくりに関心をもってもらう」「社会貢献」など参加のきっかけはさまざまでした。
参加後の感想では、仕事観、就職に対しての考え方や自社の課題、アイデアを知ることができよかったとの意見があり、 4社ともに、アンケートへ「よかった」「また参加したい」と回答。その一方で、制作時間がタイトなので時期を延長できればとの要望もあり、今後の課題となりました。